大判例

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東京高等裁判所 昭和28年(う)596号 判決

論旨は原判決が証拠として挙示した鈴木秀雄に対する検察官の各供述調書(論旨中警察官とあるは検察官の誤記と認める)は同人の想像、伝聞、意見又は憶測を述べたものであり、又前後矛盾した供述をしているのであつて、被告人が本件犯罪に共同謀議した証拠となすを得ないものであるのに、原審がこれを事実認定の証拠として採用したのは、採証の法則に違反し、延いて事実の認定を誤つたものであると主張する。よつて記録を精査するに先づ所論において主張する鈴木秀雄に対する検察官の第二回供述調書中第五項は単に同人の想像を述べたものではなく、同人が篠原和男より栄町の自動車々庫の中にタイヤが六本程あるから、それを其処にいる植草等と一緒に今晩盗もうという相談を持ちかけられ、異議なくそれに参加するようになつたという自己の直接経験した事実を述べたものであり、第六項はその時篠原和男が鈴木秀雄に対しタイヤを盗んだら売るのは植草がやることになつているといつたという自己が直接聞いた事実を述べたものでいわゆる伝聞供述ではない。また第八項は篠原和男が鈴木秀雄に対し以上の様な話をしたとき植草は始めから傍に居り全部聞いていたという自己が直接見て知つている事実を述べたもので、単なる同人の意見を述べたものではない。次に第十一項は鈴木秀雄と篠原和男が和男方で時の経つのを待つて午後十二時頃二人が先に車庫に出掛けて行つたという自己の経験した事実を述べたもので伝聞供述ではない。次に鈴木秀雄に対する検察官の第三回供述調書の第三項後段の部分に同人の意見乃至判断に基く供述記載があるが、しかし、右は単なる根拠のない同人の意思乃至憶測を述べたものではなく、その前段において供述した事実即ち自己の実験した事実から推測した意見乃至判断を述べたものであることが明らかである。更に鈴木秀雄に対する検察官の第四回供述調書中第五項の記載によると、九月十一日頃の午後篠原和男方に行つたのは、被告人と鈴木秀雄と何れが先であつたかという点について、従前の供述と異つた供述をしていることは所論のとおりであるが、しかし、それは同人が従来記憶違いをしていた点を訂正して述べたものであることは同調書第二項の記載に徴し明らかであり、右訂正した供述によるとその供述自体には何等矛盾するところは存しない。以上の如く鈴木秀雄に対する検察官の供述調書には所論指摘の如く証拠力を否定すべき理由なく、これと原判決挙示の他の証拠を綜合して原判示事実を認定することは何等経験法則又は論理法則に反するものでもないから、原判決は採証の法則を誤つたとの論旨は理由なく、また原判決挙示の証拠を綜合すると原判示事実は優にこれを認めることができ、記録を精査するも原判決に所論の如く、判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認があるとは認められないから、事実誤認の論旨も理由がない。

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